疾病
生気のない街。色の無い空。
「げほっごほっ……かふっ」
少年は1人きり。病原菌は村中に蔓延し、生き残っているのは、もう彼しか居ない。そしてその彼の命も、もう――そう永くない。
「み……ん、な……どうし……て……」
病の名は、雛見沢症候群。村人たちは皆疑心暗鬼にかられ、凄惨な殺し合いを演じ、最期は自身で自身の喉をかきむしって死んでいった。仲間が殺し合い、そして凄惨な死を遂げていく……その全てを見た少年も、既に正気を保っていられる状態ではない。
もう、喉をかきむしる気力さえなくなった。ぽろりと瞳からこぼれた涙が、すっと首に流れて。
――かゆい。
「かゆい……か……ゆい……かゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆい」
涙はどんどん溢れて来て、かゆみは増すばかり。かいてもかいても、治まらない――
村に、完璧な沈黙が訪れる。
道には、血の海に横たわった少年が独り。
ひぐらしがなく村の奥には、静かなる地獄絵図が広がる――