消えそうな

真っ赤に輝く夕陽。

 

長く長く伸びる二つの影。

 

周りの建物も何もかも真っ赤に染まっていて、空気にすら色が付いているようだった。

 

 

 

「キレイだなー……」

 

 

 

そう呟く彼の目に映っているのは、俺達の上に広がっているこれまた真っ赤に染まった銀杏の葉っぱ。

 

 

 

俺の家の近くで、二人で少しお手軽な紅葉狩り。

 

ブンちゃんは、俺の一足先を軽やかに歩いてく。

るんるんと、それはとても楽しげに。

 

その足がふと止まって、くるりと俺をふり返る。

 

唇が動いて、ゆっくりと俺の名前をかたちづくる。

 

 

 

「ジロー」

 

「どうしたの?」

 

 

 

ジローはふわりと笑って、俺に答える。

それはとても幸せそうに。

 

俺が名前を呼ぶだけでそんなに幸せそうな顔ができるジローはゲンキンだと思う。

そして、すげー優しいと思う。

 

 

 

「この紅葉な、」

 

 

 

彼は空を見上げて喋る。

深い紫の瞳の表面に、紅が映る。

ああ、綺麗すぎて、その瞳に映る紅にも嫉妬しそうだよ、俺を映してくれないかな、なんちて。

 

 

 

「すごい赤いからさ、なんかこうして見ると空に溶け込んじまいそうだよな、空も真っ赤だし」

 

 

 

そう言ってカッコよく笑う君を見て、俺も思わず笑みを溢す。けど、一瞬あとに頬がひくりとした。

 

ブンちゃんの笑顔がひどく儚く見えたから

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

いきなり慈郎にぎゅうっと抱き締められる。……痛い、キツい。

俺を抱き締める腕が心なしか震えてる。その震えに戸惑った。

 

 

 

「……どうしたんだよ?」

 

 

 

あやすように慈郎の背中を撫でると、また少し腕に込められる力が強くなった。だから、痛いんだっつうの。

でも痛いぐらいの抱擁がいちばん安心するから、まあいいんだけど。

 

 

 

「だって、」

 

 

 

ねぇ、ブン太、

君は紅葉が紅いと笑うけど、

 

 

 

「ブンちゃんの笑顔も、溶け込んじゃいそうで」

 

 

 

赤く綺麗に染まった髪は、驚くほどに夕陽色だったから。

 

 

 

「なあ……ジロー?」

 

「ん……」

 

 

 

こいつはバカだ。本当にバカだ。

 

 

 

「それを言うならな、」

 

 

 

腕を慈郎の背中に回して、俺より少し小さな体を精一杯抱き締めた。

 

 

 

「お前の金髪も、溶けてっちまいそうなんだよ」

 

 

 

いっちょ前に不安がる前に、自分のこと見てみやがれってんだ。


桜の咲く季節に季節外れに書いていた紅葉狩りのお話です^^;

思いついた時はちゃんと秋だったんですけどね……うん、よくある^ω^←

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