真夏の夜伽

慈郎が勢いよく窓を開けても、爽やかな風は全く入ってこなかった。

 

「あー、あっちい……」

 

情事の匂いがまだ色濃く残った部屋。同じ匂いを放つ心なしか湿ったシーツにくるまって、一つ小さな欠伸をする。

 

……いま、何時くらいだろうか。

 

ちらとそう思ったけれど時計を見るために頭を動かす気力すらなくて、俺はただぼんやりとジローだけを見ていた。

視線に気づいたジローが、どうしたの、とこちらに来て俺の頭に手を置く。

「んー……なんでもねぇよ」

ベッドのへりに座って優しげに頭を撫でてくれるその手が気持ち良くて、静かに目を閉じる。

まだ、意識が朦朧としている。

 

 

 

しばらく心地良い沈黙が続いたあと、俺の方から先に口を開いた。

「この時期のセックスほんとやだ、あっついしなんかべたつくし」

「A~……シャワー浴びればEーじゃん」

「どっかのバカが俺がシャワー浴びてる最中に侵入してきてそのまま第二ラウンドに突入しなきゃそれでもいいんだけどな」

「あはは~

「アハハじゃねえバカヤロ」

振り返って睨みつけでもしてやりたかったが、まだ体がだるくて動く気になれない。

 

すると、この姿勢のままじゃ慈郎の顔が見えないということに鈍ってる頭がようやく気付いて、そうなると無性に慈郎の顔が見たくなってくる。

でも慈郎のせいでだるい身体を慈郎のためにわざわざ動かすのも癪。

「ジロー」

「ん?」

「布団はいってこいよ」

「え、だって余計べたべたするんじゃ」

「いーからっ」

黙って喜んでのそのそ入り込んでくればいいのに。ジローのくせになまいき。

 

中にもそもそと入ってきて優しく俺を抱きしめたジローの体はしっとりと汗ばんでいて、抱きしめられた俺の体もやっぱり同じように汗ばんでいて、だからいつもよりもっと体がひたりと密着したような気がした。

「んー……やっぱりあちぃな」

「もー、なんなのさー」

「あっ、バカ、やだ、」

苦笑しながら慈郎が腕を解こうとするから、あわててしがみつく。

慈郎が不思議そうに顔を覗き込んできた。

「え、なに?いやなんじゃないの?」

「……べつに、嫌いじゃねえし」

べたべたするし、暑いのはそうなんだけど。

結局のところジローとそうやってべたべたひっついてるのが嫌いじゃないというかむしろ好きな時間なわけで。いつもは、部活のあとだって真っ先にシャワーを浴びて汗を流すけど、そうしなくても構わないのは。

……やっぱり、ジローだからなんだろう、な、不本意ながら。

 

 

 

だって、ジローとはいつでもべたべたひっついてたいから。

ずっとぎゅっとひっついて、汗をかいてるならお互いのそれを一緒くたにしてどっちのモンかわからなくしてしまおう。

そしていつか、皮膚すらもどちらのものかわからなくなるほどに溶け合いますように、と願いながら。

 

あ、

そんなことを考えてたら、体が熱くなってきました。

 

「……じ、ろ」

慈郎の名前を呼びながら、ふる、と体を震わせると、俺を包んでる腕にきゅ、と力が籠もった。……腰に当たってくる熱さに、あぁやっぱり俺たちは繋がってる、と安堵する。余計ずくりと熱を帯びたカラダを強い力で反転させられて、貪るようなキスをした。

 

さあ、再び、終わらない夜のはじまり、はじまり


最近、暑くなってきましたよね

そろそろ夏かなあと感じます

 

ということで、誕生日のお話を除くと、久しぶりの更新となりました^^♪

私としては珍しく、割とすらりと書けたお話です*

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