「宍戸さん！」

「長太郎！どうしたんだよ？珍しいな朝家まで来るなんて」

「だって今日は宍戸さん誕生日じゃないですか！」

「！忘れてた！そういえば向日達からメールきてたな」

メールだってきていたのに自分の誕生日を忘れてしまう

そんな彼らしさに心の中でくすりと笑う

「やっぱり来て良かったです」

「長太郎もしかしてそれだけのために方向違うのに迎えに来たのか？」

自然と傾げた首が可愛いなんて口には出せない

「“それだけ”なんかじゃないです！俺にとっては大事なことなんです！」

「おっおお」

宍戸さんの誕生日は絶対家まで迎えに行く

それはずっと前から決めていたことだった

大好き人の誕生日だ

一番最初に会いたいと思うのは当然だ

まあ、それが分からないところも俺にとっては可愛いんだけれど

「じゃ行こうぜ」

「はい！」

いつもは学校で待ち合わせだから２人並んで登校するのは新鮮で、やっぱり心が弾む

本当に来て良かった

心からそう思った

「そういえば向日のメール凄かったぜ」

「そうなんですか？」

「おー、俺には誕生日祝うだけであんな長いメール打てねえ」

「あははっ向日先輩らしいですね」

「だろ？」

たわいもない話をしながら歩いているだけでもこんなにも幸せな気持ちになるのはきっと一緒にいるのが宍戸さんだからなんだろう

「あっ！」

「あ？」

「忘れてました！」

宍戸さんに気を取られて？大事なことを忘れていた

「忘れてたって何を？」

宍戸さんが不思議そうにこっちを見るが俺はごそごそと鞄をあさる

「あった」

傾かないように気をつけて鞄に入れたそれを、やっぱり傾かないように取り出す

「あっあのプレゼントなんですけど」

「別にプレゼントなんかいいのに」

「だから、これにしてみました！」

「？」

宍戸さんへのプレゼント

何にしようかひたすら悩んでたどり着いた結果は

「宍戸さんきっと物だと気にすると思って、お弁当作ってきたんです！」

「弁当？」

「はい！一生懸命作りました」

これだったらきっと受け取ってもらえる

そう思って母親に手伝ってもらいながら朝から頑張ったのだ

「弁当って、女子かよ」

「いっ嫌でしたか？」

「まさか！ありがとよ長太郎」

「はいっ！」

良かった、喜んでくれた

「でもそれは後で貰うよ」

「えっ？」

「一緒に食おうぜ、昼飯

昼休み迎えにこいよ」

「もちろんです！」

本当に一生懸命作ったかいがあった

何よりも自分のプレゼントに宍戸さんが喜んでくれたことが一番嬉しかった

「長太郎、ありがとう」

「っ！宍戸さん、大好きです！」

「なっこんなとこで何言ってんだよ！」

「宍戸さんの顔見てたら言いたくなったんです」

「アホかっ！」

「アホでいいです！」

「あのなぁ…」

「宍戸さん、愛してますよ」